チャンソフトグローバル ChangSoft Global
なかった市場をつくった8年

Part 1 · 2017 — 2023

見えなかった数量を見えるように

鉄筋数量はなぜ常に食い違い、なぜ誰もその理由を説明できなかったのか。

1.1算式では根拠を示せなかった

従来方式の問題は精度ではなく追跡可能性でした。数量が計画より多く出ても、それが正当な増加なのか過大算出なのかを見分ける手段がありません。すべての数量が、算式の結果値としてしか存在しなかったからです。

  • 建物の連続性が反映されない — 部材単位で切って計算するため、接合部・定着部が実際と異なります。
  • 余裕代が慣行的に上乗せされる — いくらが、なぜ加算されたのかが算式の中に埋もれます。
  • 図面の中に数量を隠せる — 目視で図面を確認する方法では見つけ出すのが困難です。

1.2数量が増えることを望む側がいる

より根本的な問題は、利害が逆向きに設定されていることです。鉄筋数量は本社から現場、鉄筋施工図の協力会社、加工場へと流れながら確定しますが、この連鎖の途中では、数量の増加が誰かの利益になります。

鉄筋数量が確定する経路と、誘因の衝突

同じ数量をめぐって誘因が正反対に働く

本社

実行予算の策定

現場

配筋指針の決定

鉄筋施工図の協力会社

加工集計表の作成

加工場

鉄筋加工・納品

鉄筋トン ↑ → 収益性 ↓

発注する側 — 数量が増えれば原価が上がる

鉄筋トン ↑ → 収益 ↑

供給する側 — 数量が増えれば売上が伸びる

要点 — 数量を膨らませる誘因が構造的に存在するのに、算式ベースの積算ではそれを検証する根拠がありませんでした。問題は相手ではなく、検証手段の不在でした。

1.3三つの数字を並べて置く

K建設が採った方法は単純です。同じ建物について三つの数量をつくり、比較することです。そして差が出るたびに「なぜ」を最後まで追及しました。

三者比較プロセス — 計画から実投入まで

STEP 1 · 実行予算の策定段階

従来の2D算式積算

図面+Excel算式+慣行的な余裕率

BuilderHub数量

3Dモデルから算出 · 根拠算式を提供

一次比較 — 実行数量は妥当か

設計変更 · 現場要望を反映 → モデル再生成

施工直前の実条件を反映した基準数量

STEP 2 · 実投入の検証段階

BuilderHub再算出数量

変更事項を反映した最新モデル

実際の鉄筋施工図数量

現場に実際に投入された加工数量

二次比較 — 乖離の原因は何か

二次比較で乖離が生じたら、原因を追跡します。 BuilderHubの数量は3Dモデル上に目に見える形で存在し、根拠となる算式も併せて提供されるため、「ここでこれだけの差が出た、理由はこれだ」と指し示すことができます。
実際に洗い出された例 — 2m以下の短い壁の場合、3D数量は水平筋を計算したうえで両端にU字筋を重ねて計算する設定になっていました。積算基準とモデリング基準が異なれば、同じ壁でも数量が変わります。こうした差を一つずつ基準として整理していきました。

1.4どの段階で使うのか — 導入期の業務フロー

「BuilderHubをどこに組み込めばよいのか」は、新規のお客様が最初に尋ねる質問です。導入初年度の試行現場における実際の流れは、次のとおりでした。

導入期の業務プロセス — 試行適用現場

① BIMモデリング · IN-HOUSE

現場開設 · CAD要員の配置
BIM教育
実施設計図書の納品
躯体3D BIMの作成
  • · 本社BIM専門家1名が支援
  • · モデリングまで約5か月
  • · 外注ではなく現場要員が実施

② BIMモデルの活用

施工詳細の数量分析
鉄筋施工図の作成
鉄筋コストモニタリング
VEアイテムの抽出
現場協議
鉄筋数量を約2%削減

現場BIM教育 → モデル活用

施工性検討 · 工程別の数量確認

③ 結果の分析

BIM適用成果の分析

次の現場へ反映

BuilderHubが入る地点は二つ — 躯体3D BIMの作成と、そのモデルからつくる数量

残りは従来業務のままです。プロセスを新しくつくるのではなく、既存の流れの二つの地点を変えることから始めます。

導入初年度はこの程度で十分でした。DBも、概算見積も、常時モニタリングもまだありません。

導入期は現場単位でのみ機能します。全社的な体系はまだなく、一つの現場で「使えるのか」を確認する段階です。

1.5鉄筋は一種類ではない

比較を重ねるなかで明らかになった最も重要な事実は、鉄筋が二つの性格に分かれるということでした。この区分は韓国以外ではあまり知られていませんが、数量差のかなりの部分がここで発生します。

構造用鉄筋と施工用鉄筋

構造用鉄筋

構造計算で決定 · 構造図に表現される

92〜95%

5〜8%

構造用鉄筋 · 26種類

主筋 · 補強筋 · 縦筋 · 横筋 · スターラップ · U字筋 ···

構造計算の結果で決まるため基準が明確で、検証が可能

施工用鉄筋 · 15種類

ウマ筋 · 桁行筋 · ダボ筋 · 幅止め筋 · 補助スターラップ ···

協力会社の経験に依存 — 基準がなかった

構造用鉄筋は構造図に表れるため検証できます。問題は施工用鉄筋です。図面に表現されず協力会社の経験で決まるため、いくらが適正なのかを判断する根拠がありませんでした。

比率は5〜8%と小さく見えますが、鉄筋全体が数千トンの現場では数百トン規模です。そして基準がないということは、そのまま交渉の対象になるということです。

1.6差はなぜ生じるのか — コストモニタリング

モデル数量と鉄筋施工図数量を比較するだけでは足りません。差が出たときにその原因を指し示せてはじめて、管理が成立します。そこで、着工後に発注される鉄筋量を3D BIMモデル基準で照合する鉄筋コストモニタリング報告書を、月次で提供しました。

  • 積算に対するBIM数量の総括・棟別比較表
  • BIM数量に対する発注数量の比較グラフと表
  • 総括/棟別/階別の比較分析表
  • 主要な差異についての詳細分析

この作業を繰り返すなかで、差異の原因は四つに整理されました。

差異の原因性格
設計図書の変更予測不能 — 発生時はモデル更新で対応
施工性のための現場詳細変更
継手補正長さ · 桁行方向の鉄筋 · 現場用長尺鉄筋
正当な差異 — 基準として吸収可能
事前未決定・未モデリング項目
スリーブ · 集水桝 · 設備ボックス など
範囲の問題 — 算出基準に明記
モデリング作業者の誤り品質の問題 — 基準・教育で解消

重要なのは、四つのいずれにも該当しない数量が残るという点です。検討結果で「鉄筋施工図に説明のつかない数量が存在する」と分類される項目がそれです。従来の方式では、こうした数量があっても表に出ませんでした。比較すべき基準線がなかったからです。

1フロアの差が持つ重み — この検討は部材単位で行います。壁の支持筋、幅止め筋、スラブ主筋の継手長さのように、項目一つひとつの差はトン単位にも届きません。しかし基準階は繰り返されます。 1フロアで見逃した差は、階数と棟数の分だけ掛け算されます。コストモニタリングを月次で繰り返すべき理由です。

1.7基準をつくる

K建設は施工用鉄筋について、全社レベルの鉄筋施工図ガイドラインを策定しました。慣行で決まっていた項目に、数値基準を与えたのです。

項目従来(慣行)変更(基準)
基礎上端筋の支持鉄筋ピッチ@ 1,000 〜 1,200@ 1,500
壁の接続鉄筋8-HD104-HD10
壁-基礎の接続鉄筋最小化基準を適用

同時に、鉄筋施工図の作成段階で過配筋と施工図での欠落を併せて確認するようにしました。基準を定めたうえで協力会社向けの教育と協議を行い、基準が現場で実際に機能するようにしています。

1.8はじめは自分たちでやってみた

導入初年度、K建設はBIMモデリングを外注に頼らず現場社員が自ら行いました。

「自分たちの現場の社員が、直接BIMデータを扱えるように」

— 導入初期の目標

現場のCAD担当者を対象にBIM教育を実施し、新入社員教育のカリキュラムにBIMを組み込み、動画と活用マニュアルを作成して社内に配布しました。

ただしこれは、モデリングをこの先も自前で続けるという意味ではありませんでした。 目的は判断できる目を持つことです。数量がなぜそうなったのか、どの基準を適用すべきか、上がってきた成果物が正しいか — これを自分で判断できなければ、誰に任せても検証にはなりません。

そしてプロセスの回し方を確認したうえで、外注に切り替えました。 現在は4週間で専門会社がモデリングし、社内のBIMパートと現場が1週間でモデルと数量を確認し、本実行予算に反映する体制です。

順序が重要です。内製化 → プロセス確立 → 外注化です。逆にすると、検証できない成果物を受け取ることになります。何を求めるのか、受け取ったものが正しいのかを判断する基準が先に立ってはじめて、外注が機能します。

BuilderHubで生成した躯体BIMモデル
現場で自ら生成した躯体BIMモデル。こうしたモデルがプロジェクトごとに積み上がり、第2部の資産となりました。
第1部の結論 — 数量を減らしたのではありません。数量がなぜその量なのかを説明できるようになったのです。削減は、透明性の結果として後からついてきました。

顧客企業名・現場名は匿名処理しており、数値は公開発表資料および事前に協議された範囲のみを引用しています。図表とグラフは原資料をもとに新たに作成しました。