BIMソフトウェアはなぜこれほど多いのか
Revitもあり、Teklaもあり、構造計算プログラムもあります。それでも鉄筋1本のフック角度と定着長さを決める仕事は、いまも人が行っています。まずはその理由から見ていきます。
公開 2026年7月22日·確認時点 · 2026年7月
要点
- BIMはプロセスであり、BIMソフトウェアはそのプロセスを遂行するツールです — 一つのツールがすべてを担うわけではありません
- 一貫構造計算・BIMオーサリング・詳細/製作・配筋アドインは、それぞれ別の問題を解いています
- その間に1本単位の鉄筋の実体を決める層があり、この層は標準もプラットフォームも埋めてきませんでした
1BIMはツールの名前ではない
BIM(Building Information Modeling)はプロセスです。3次元の情報モデルを基礎として、建物のライフサイクルにわたって発生する情報を集め、活用する方式であり、BIMソフトウェアはそのプロセスを効果的に遂行するためのツールです。
ですから「BIMを導入した」という言葉は、それ自体ではほとんど情報を持ちません。どのツールで、どの段階を、どこまで行ったのかを述べて初めて意味が生じます。
建物を一つ設計し、建てるまでには性格の異なるソフトウェアが数多く関わります。RC躯体を対象に見ると、おおよそ次のように分かれます。
一貫構造計算
構造解析
BIM オーサリング
詳細・製作
干渉・コーディネーション
ビジュアライゼーション
自動化・プログラミング
2ツールごとに解く問題が違う
このうちRC躯体の配筋に直接関わるのは四つです。それぞれ解く問題が異なります。
| 分類 | 代表的なツール | 解く問題 |
|---|---|---|
| 一貫構造計算 | SS7・BUILD.一貫・SEIN La CREA 解析中心 — MIDAS Gen・ETABS・SAP2000・RFEM・STAAD.Pro | 部材寸法と必要鉄筋量を決める — 安全か |
| BIMオーサリングプラットフォーム | Revit・Archicad・Civil 3D・SketchUp | 建物全体をモデリングし図面をつくる — どのような形か |
| 詳細・製作 | Tekla Structures・Advance Steel | 部材を製作可能な水準まで詳細化する — 鉄骨から出発した系統 |
| 配筋アドイン | SOFiSTiK Reinforcement・GRAITEC PowerPack・Naviate Rebar・CADS RC3D | BIMプラットフォームの中で鉄筋を生成する |
各ツールは自らの問題をよく解いています。構造計算は鉄筋量を正確に出し、BIMプラットフォームは建物全体を扱い、詳細ツールは製作情報をつくります。問題はその間にあります。
3構造計算は「どれだけ」までしか答えない
構造計算が出すのは断面表です。柱主筋D25 12本、フープD13@100 — 種別・径・本数・ピッチです。ここまでは「どれだけ必要か」に対する答えです。
しかし現場で鉄筋を切り、曲げ、組み立てるにはそれだけでは足りません。フックを90度に曲げるか135度に曲げるか、定着をどこからどれだけ取るか、継手をどの位置に置くか、接合部で柱主筋と梁主筋がどのように互いをかわすか — この判断が残ります。
しかし構造計算は設計の終わりではなく、むしろ始まりに近いものです。計算結果は構造設計を経て図面になり、その図面はさらに施工のための配筋へ翻訳されなければ、現場で鉄筋を切ることはできません。段階ごとに答える問いが異なります。
| 段階 | 答える問い | ここで決まること | 成果物 | いま誰がやっているか |
|---|---|---|---|---|
| ① 構造計算 | 安全か | 部材断面・必要鉄筋量 種別・径・本数・ピッチ | 構造計算書・断面表 | 一貫構造計算プログラム — 自動 |
| ② 構造設計 | どの方針で配筋するか | 部材配置・配筋基準と標準詳細の適用方針 | 構造図 一般図・標準詳細図 | 構造設計者 — CAD・BIMの支援を受ける |
| ③ 施工のための配筋 | どう施工するのか | 鉄筋1本の形状 フック角度・定着長・継手位置と工法・接合部の干渉回避・発注長 | 配筋施工図・鉄筋加工帳(BBS) | 人 — 熟練者の判断 |
| ④ 加工・組立 | そのとおりに作れるか | 切断長・曲げ形状・組立順序 | 加工された鉄筋・現場組立 | 加工工場・鉄筋工 |
「どれだけ必要か」と「どう施工するか」の間には、層が一つあります。
その層で決まるのが、鉄筋1本の実際の形状です。そしてこれまで、この層は人が埋めてきました。
4なぜこの層が空いているのか
理由は単純です。この判断が基準の解釈と現場経験が混ざる領域だからです。配筋基準は条件を与えますが、すべての状況を列挙するわけではなく、接合部のように鉄筋が集中する箇所では、基準を満たしながら物理的に納める調整が必要になります。
そのためこの仕事は長らく熟練技術者の暗黙知として残ってきました。2D図面の上で経験によって判断し、現場で合わせてきたのです。ソフトウェアがこの場所を空けてきたのは怠慢だからではなく、基準をコードに移すことが難しいからです。
出典
- Revit Overview(BIMの定義と範囲)Autodesk
本記事は公表資料をもとに整理したものであり、法令の解釈や助言ではありません。制度は随時変わりますので、実際の適用にあたっては原文および所管機関の最新の公表内容をご確認ください。
