鉄筋BIMは、どこから始めればいいのか
「BIMを導入する」までは、どの会社も決まります。その次が決まりません。どの建物から、どの範囲まで、何を先に合意して始めるのかが空白のままです。本稿は、その最初の一歩を4ステップで示します。
公開 2026年8月18日·確認時点 · 2026年8月
要点
- 止まっている本当の理由は道具不足ではなく、知識が二人に分かれていることです。配筋が分かる人はほとんど2Dしか扱えず、3Dが得意な人は配筋をよく知りません
- 日本で着工前の検討が慣例なのには理由があります。耐震構造 → 太い鉄筋 → 過密 → 現場では変えられない。だから設計段階へ前倒しします
- 始まりは全棟ではなく、2D図面では検討が事実上むずかしい部位からです。斜めに交わる交差部・免震基礎・多方向の接合部・鉄筋過密部
- モデルを作る前に運用基準5項目を合意します。定着の解釈ひとつ、継手の判断ひとつで数量がトン単位で動きます
1問題は道具ではなく、人が分かれていること
鉄筋BIMを始められない理由をうかがうと、多くは道具の話になります。ソフトが高い、扱える人がいない、どの製品を選べばよいか分からない。
ところが日本市場で当社が繰り返し確認した事情は、少し違います。配筋が分かる人はほとんど2Dしか扱えず、3Dが得意な人は配筋をよく知りません。配筋の判断と3次元の操作が、一人の中で出会わないのです。
二つを並べて多角的に検討できる環境がなかった。道具がなかったのではなく、知識が二か所に分かれていた。
ですから本稿の答えは「すべてをBIM化する」ではありません。4つのステップに分けて始めます。各ステップはそれ自体で完結し、次へ進むかどうかは結果を見て決められます。
2なぜ日本は着工前に検討するのか
日本では鉄筋干渉検討が慣例だ、とはよく言われます。その理由まで書かれた文章は多くありません。因果は単純です。
- 耐震構造 求められる鉄筋径が太く、数量も多くなります。
- 太いほど曲げにくい 現場で手直しする余地が減ります。
- 密になるほど曲げる空間がない 接合部で鉄筋どうしが場所を奪い合います。
- 施工段階では変えられない 残る方法は、設計段階で調整することだけです。
事前の検討なしに着工すれば手戻りが繰り返され、その費用と時間の多くは現場が負います。慣例になったのは文化ではなく、損失を経験した結果です。
施工段階で変えられるものではない。だから設計段階へ引き寄せる。
この前倒しをフロントローディングと呼びます。施工で表面化する問題を設計で処理するという意味で、以下の4ステップはすべてこの考え方の実行手順です。従来は「これをどう造るのか」という判断が、設計事務所と施工者の設計部門が着工直前に出会う場で初めて行われていました。フロントローディングとは、この協議を設計段階の中へ前倒しすることです。

3STEP 01 — 全棟ではなく、むずかしい部位から
最初の一歩が決まらない会社に共通するのは、範囲を建物全体で捉えることです。それでは費用も期間も判断できません。始める範囲は一つに絞ります — 2D図面では検討が事実上むずかしい部位。
| 判別の基準 | なぜむずかしいか |
|---|---|
| 柱・梁の軸が斜めに交わる部位 | 断面図が直交を前提に描かれ、実際の干渉位置が図面に現れません |
| 免震基礎 | 定着板・アンカー・主筋が狭い区間に重なり、部材断面だけでは余裕を判断できません |
| 梁が複数方向から集まる接合部 | 各方向の上端筋・下端筋が同じ高さを要求します |
| 鉄筋過密部 | 規定をすべて守ると、物理的に入る空間が残りません |
成果物は対象部位のリストです。この段階でモデルはまだ作りません。どこを見るかだけを合意します。
4STEP 02 — BIMより先に決めること
配筋は設計基準だけでは決まりません。基準が残した幅を、会社と現場の運用が埋めます。この運用を合意しないままモデルを作ると、出てきた数量について「うちのやり方と違う」という話が必ず出ます。
| 合意項目 | 何を決めるか |
|---|---|
| かぶりの反映 | 設計かぶりをどの面基準で適用するか |
| 長尺材の長さ | 定尺以外の長さをどこまで許容するか |
| 余長 | 加工・組立の余裕をいくつ見るか |
| 継手の方式 | 重ね・機械式・溶接のどれを、どの部位に |
| 定着基準の優先順位 | 基準が複数に解釈できるとき、何を優先するか |
5STEP 03 — 鉄筋BIMのプロセス
ここからが実際の工程です。ゼネコンでも設計事務所でも、社内で組み立てることができますし、当社に委託することもできます。どちらでも手順は同じです。社内に3Dの人員がまだいなければ、まず委託から始めてSTEP 04で社内へ移す道もあります。
入口は二つあります。構造設計データ(SS7)があれば、そのまま読み込んで最短で入ります。主に構造設計事務所がこの経路です。設計原本を受け取れないゼネコン・BIM受託会社は、2D図面(DWG)の認識から始めます。

認識前
構造伏図の原本をそのまま読み込んだ状態

認識後
柱・梁・スラブが部材として認識され、躯体が生成された状態

躯体が起きたら3Dの配筋モデルを自動生成します。定着・かぶり・継手位置・曲げ半径まで実物基準で入ります。接合部・露出柱脚・傾斜スラブ・階段のように手間のかかっていた部位もここに含まれます。数日かかっていたモデリング作業が大きく減ります。
次が干渉の自動検出と修正です。干渉は一覧で出て、3Dには重なり量がmm単位で表示されます。その数値ぶん移動するか、長さ・角度を変えて解消し、同じ画面で再チェックします。


修正前
梁主筋と柱主筋の重なり量が表示された状態

修正後
表示された数値ぶん動かし、干渉が解消された状態
最後が変更の反映です。鉄筋のあきや定着長さが足りず部材寸法や配筋を変える必要があるとき、値を直せばその部位がただちに再配筋されます。変更が怖くないことが、設計段階で調整できる条件です。

変更前
断面寸法と配筋条件を入力する画面

変更後
値を変えると、その部位がすぐに再配筋される
6STEP 04 — 内製化
基準と成果が固まったら、社内へ移します。ここで移すのは道具ではなく、STEP 02で合意した基準です。基準が文書として残っているからこそ社内へ移せますし、そこから配筋の判断は、その会社のデータとして積み上がります。
順序を逆にしないことが大切です。基準が立つ前に道具だけを社内に入れると、値を決める仕事がまた一人に集まります。それでは最初の問題に戻ってしまいます。
7STEP 03で残るもの、三つ
先のSTEP 03を一度回すと、手元に残るのは次の三つです。
- 干渉検討済みモデル どこにどの干渉があり、どう解消したかが反映された配筋モデル。検討結果のレポートも残ります。
- 追跡できる数量積算書 総量の数字ではなく、どの部材のどの鉄筋から出た数値かが計算式まで残ります。
- Revitモデル 形状のコピーではなく、鉄筋一本一本が配筋情報を持つRevitオブジェクトです。


8実際にこう使われました
実績を二件ご紹介します。お客様のご意向により、社名とプロジェクト名は伏せます。
| お客様が抱えていたこと | 当社が行ったこと | |
|---|---|---|
| A社 (ゼネコン) | Revitで配筋モデリング・干渉チェック・図面化まで自社で行っていたが、完成までに時間がかかり、現場でそのまま使える水準の配筋を作るのがむずかしかった | 免震基礎・独立基礎・地中部が組み合わさる接合部を当社でモデリングし、Revit変換と図面化まで、本件では2週間以内に納品しました |
| B社 (ゼネコン) | 公共積算の数量と実際の施工数量との乖離が大きかった | 実際の配筋形状どおりに3Dモデリングして数量を算出し、既存の数量と比較して差の性格を分けて提示しました |
9なぜ今か、そしてまだできないこと
従来は、詰めきれていない図面でも施工者が確認し直してくれる慣行がありました。近年は経済的・時間的な余裕が失われ、設計側にも責任が問われる流れになっています。設計事務所にとって今始める理由ができたということであり、これは第4節の基準合意と直結します。
正直に書いておきます。まだできないことがあります。
- 自社での図面化はロードマップにあります 現在、図面はRevit変換を経て作成します。
- IFCの直接出力もロードマップにあります
- 配筋基準はJISで実装しています
すべてをBIM化する必要はありません。2Dでは見えなかった一つの部位から始めれば十分です。
出典
- BuilderHub-R 製品紹介チャンソフトグローバル
- 図面はどちらも正しい — 着工前の鉄筋干渉検討チャンソフトグローバル
- では今、導入してよいのか — AI配筋シリーズチャンソフトグローバル
本記事は公表資料をもとに整理したものであり、法令の解釈や助言ではありません。制度は随時変わりますので、実際の適用にあたっては原文および所管機関の最新の公表内容をご確認ください。
