ベトナムのBIM義務化、2026年7月1日に何が変わったか
2026年7月1日、ベトナムの建設法令体系が一斉に入れ替わりました。建設法が新法に、政令がNghị định 217/2026/NĐ-CP(政令217)に、工事等級の基準がThông tư 34/2026/TT-BXD(通達34)に置き換わり、すべて同じ日に施行されました。BIM条項もその中で変わっています。旧資料で準備すると、対象範囲から食い違います。
公開 2026年9月8日·確認時点 · 2026年9月
要点
- 対象 — 新築のグレードII(cấp II)以上の全建物。旧政令にあった「グループB以上の事業」条件が削除され、資本の種類を問わず適用されます
- 時期 — 事業化調査報告書(Báo cáo nghiên cứu khả thi)の段階から。設計ではなく事業準備段階で始まります
- 形式 — IFCまたはその他のオープン形式で提出。ネイティブ形式は当局の求めに応じて照合用に提出します
- 分野 — 政令は分野を分けていません。分野を列挙した文書はQuyết định 258/QĐ-TTg(決定258)のみで、第1項目が主要構造の三次元形状です
12026年7月1日、法令の三層が同時に変わった
ベトナムの建設法令は、法律・政令・通達の三層でできています。三層が同じ日にまとめて置き換わったのが今回の特徴です。どれか一層だけ旧法で読むと、結論が変わります。
| 層 | 旧法(廃止) | 現行(2026.7.1施行) | BIMとの関係 |
|---|---|---|---|
| 法律 | Luật Xây dựng 2014・2020改正 | Luật Xây dựng số 135/2025/QH15(建設法135) | 上位根拠 |
| 政令 | Nghị định 175/2024/NĐ-CP | Nghị định 217/2026/NĐ-CP(政令217) | 第8条がBIM条項 |
| 通達 | Thông tư 06/2021/TT-BXD | Thông tư 34/2026/TT-BXD(通達34) | 「グレードII」を判定する基準 |
2誰が対象か — 新築グレードII以上、資本の種類を問わない
政令217第8条第1項は、新築のグレードII以上の建物に、事業化調査報告書または経済技術報告書の段階からBIMを適用するよう定めています。旧政令には「グループB以上の事業」という条件が付いていましたが、この条件は削除されました。民間資本の事業も、等級を超えれば対象です。
例外は投資決定権者が定めることができます。線状工事、特殊地域の事業、国家機密を要する事業がその対象です。対象外の建物には自発的な適用を推奨しています。
では「グレードII」とは何か。通達34付属書II表2「建物および建物型構造物」の項目が六つの基準を置き、六つのうち最も高い等級を適用します。どれか一つでも超えればグレードIIです。
| 基準 | グレードIIの範囲 | グレードIII(参考) |
|---|---|---|
| 高さ | 28m超〜75m | 6m超〜28m |
| 階数 | 8階〜24階 | 2〜7階 |
| 延床面積 | 10,000㎡超〜30,000㎡ | 1,000〜10,000㎡ |
| 最大スパン | 50m〜100m未満 | 15m〜50m未満 |
| 地下深さ | 6m〜18m | 6m未満 |
| 地下階数 | 2〜4階 | 1階 |
階数と高さだけを見ると見落とすものがあります。延床面積10,000㎡超だけでグレードIIです。中規模のマンション(nhà chung cư)や工場は、階数が低くても面積で該当します。階数の算定にも規則があります。地上階と半地下階を合算し、屋根裏は除外し、塔屋は屋上面積の30%以下のときだけ除きます。
3何を提出するか — IFC、そしてモデルに含めるべきもの
第8条第3項は、対象建物の発注者が審査書類に加えてBIMデータを建設専門機関に提出するよう定めています。形式と内容は次のとおりです。
- 形式 — オープン標準のIFC、または工事の特性に合ったその他のオープン形式。旧法は「ネイティブ+IFC 4.0の同時提出」でしたが、現行はIFCを基本とし、ネイティブは当局の求めに応じて照合用に提出します
- 内容 — 建物の位置と三次元形状、主要部材の主要寸法、そして建物内外の技術インフラとの接続方案。最後の項目は旧法になかったものです
- ネイティブの条件 — 求めに応じて提出する際は、パラメータ・オブジェクト構造・属性がそのまま保持された原本でなければなりません
第8条第5項は、当局がBIMデータを審査でどう使うかも列挙しています。位置・形態・主要寸法、建築・主要構造の方案、空間構成と技術システム、基準適合の確認、そして技術的干渉チェック(kiểm tra xung đột kỹ thuật)と主要指標の抽出です。干渉チェックと数量指標が審査項目として明文化されました。
当局のインフラが整えば、BIMモデルが紙の設計図書に代わり、同等の法的効力を持ちます。
第8条第5項b号。モデルに完全かつ正確に表現された内容は、紙の図面を提出しなくてよくなります。「条件の整った機関から」という但し書きが付いています。
このほかに二つあります。公共投資事業のグレードI以上の建物は発注者が共通データ環境(CDE)を構築・運用しなければならず、対象建物は竣工後に竣工BIMモデルを国家建設活動データベースに更新しなければなりません。
4審査の接点が変わった
旧政令では建設専門機関が設計を審査し、提出書類の一覧が条文にありました。現行の政令217ではその条文がなくなりました。第41条により、入札直前の設計段階の審査は発注者自身が行います。当局と向き合う場は事業化調査報告書の審査へと前倒しされました。
5分野区分と精度はどの文書にあるか
政令217はBIMを分野に分けていません。「主要部材(cấu kiện chính)」とだけ書いています。分野を列挙した文書は首相決定Quyết định 258/QĐ-TTg(決定258、2023年3月17日)のみです。BIMファイルの最小要件を定める中で、主要構造の三次元形状、そして空調・換気・給排水の配管をそれぞれ項目として立てました。構造が第1項目です。
精度は建設省のQuyết định 348/QĐ-BXD(決定348)「BIM適用一般指針」第4章が定めています。LOD 200は数量・寸法が相対的で位置が近似の基本設計段階のモデルで概算に使い、LOD 300は数量・寸法・形状・位置が正確なモデルで、「数量積算に十分な情報を提供しなければならない」と明記しています。数量を出すにはLOD 300が必要という意味です。
数量積算の方法と様式はThông tư 13/2021/TT-BXD(通達13)付属書VIが定めています。総括表BẢNG 6.1と明細表BẢNG 6.2の二様式があり、コンクリート・型枠・鉄筋の算出規則と控除規則が併せて書かれています。この様式は当局への提出物ではなく、発注者審査・入札・契約で使う法定様式です。
| 問い | 答えのある文書 | 内容 |
|---|---|---|
| 誰が、いつ、何を | 政令217 第8条 | 新築グレードII以上・事業化調査段階から・IFC |
| 自分の建物はグレードIIか | 通達34 付属書II | 六基準のうち一つでも超えればグレードII |
| どの分野を | 決定258 | 主要構造の3D形状/空調・換気・給排水の配管 |
| どれだけ精密に | 決定348 第4章 | 数量積算はLOD 300 |
| 数量はどの様式で | 通達13 付属書VI | BẢNG 6.1・6.2 |
6構造・数量には何を意味するか
ここからは私たちの見方です。事実関係と分けてお読みください。
制度が求めるものは二重です。当局に出すモデルは位置・三次元形状・主要寸法まで、発注者と入札で使う数量はLOD 300の精度でなければなりません。二つの要件を一つのモデルで満たすには、範囲を法が第1項目に挙げた主要構造に絞り、その中で寸法と位置を図面どおり正確に立てるのが最短です。
私たちがベトナム市場向けに作ったBIM 258-Sは、その順序に従っています。製品名は決定258から取り、決定258が分けた分野区分を製品群がそのまま踏襲します。2D構造図の一覧表と伏図を読んで躯体モデルを自動で立ち上げ、同じモデルからコンクリート・型枠の数量を算出します。通達13付属書VI様式の出力は2026年12月、IFC書き出しは2027年初頭を予定しています。今できることと予定を分けて記しておきます。
制度は分野を分け、最初の枠は構造です。製品も同じ順序で広げます。
製品の詳細はBIM 258製品ページにあります。
出典
- Nghị định 217/2026/NĐ-CP(政令217)— 建設活動の詳細規定、第8条BIM。2026年7月1日施行ベトナム政府 法令ポータル
- Quyết định 258/QĐ-TTg(決定258)— BIM適用ロードマップ承認、2023年3月17日ベトナム政府 法令ポータル
- Thông tư 34/2026/TT-BXD(通達34)— 工事等級の分類、付属書II 表2ベトナム建設省
- Thông tư 13/2021/TT-BXD(通達13)、Phụ lục VI — 数量積算の方法と様式ベトナム建設省
- Quyết định 348/QĐ-BXD(決定348)— BIM適用一般指針、第4章LODベトナム建設省 BIMポータル
本記事は公表資料をもとに整理したものであり、法令の解釈や助言ではありません。制度は随時変わりますので、実際の適用にあたっては原文および所管機関の最新の公表内容をご確認ください。
