日本のBIM制度は今どこまで来ているか
「日本ではBIMが義務化された」という話をよく耳にします。半分だけ当たっています。土木と建築はまったく別の制度であり、建築はまだ義務化ではありません。
公開 2026年7月22日·確認時点 · 2026年7月
要点
- 土木 — 令和5年度から、国土交通省直轄土木の詳細設計・工事にBIM/CIMを原則適用
- 建築 — 義務化ではなく支援・誘導。ただし2026年4月1日にBIM図面審査が開始され、建築確認の入口が開きました
- 現段階は「図面」の審査であり、次の段階として「データ」の審査が工程表に置かれています
- 属性情報の標準化が進んでおり構造編も含まれます — 構造・配筋データの品質が問われる時点が近づいています
1「BIM義務化」は二つの別の話である
日本のBIM制度を語るときに最も多い混乱は、土木と建築を混ぜて見てしまうことです。二つの制度は、所管する部署も、強制力も、進んでいる段階も異なります。
| 区分 | 土木(BIM/CIM) | 建築 |
|---|---|---|
| 強制力 | 原則適用 — 事実上の義務 | 義務ではない — 支援・誘導 |
| 範囲 | 国土交通省直轄の土木業務・工事 | 民間を含む建築全般 |
| 時期 | 令和5年度(2023年度)から | 2026年4月にBIM図面審査が開始 |
| 主体 | 国土交通省 | 国土交通省住宅局(建築BIM推進会議) |
22026年4月、BIM図面審査が始まった
建築側での最も大きな変化は、2026年4月1日に開始された「BIM図面審査」です。BIMモデルから出力した図面で建築確認の申請ができるようにする仕組みで、国土交通省がガイドラインとマニュアルを整備したうえで施行されています。
申請者側に求められるのは、大きく三つです。入出力基準に沿ったBIMの運用、それについての適合誓約書、そして確認申請図書表現標準に沿った図面の出力です。審査側(特定行政庁・指定確認検査機関)を対象とした講習会も、施行前に実施されました。
ただし、いま審査されるのは依然として「図面」です。
BIMモデルそのものを審査するのではなく、BIMから出力した図面の整合性を確認する段階です。この区別が次節の中心になります。
3次は「データの審査」である
国土交通省の「建築BIMの将来像と工程表」は、図面の審査を中間段階と位置づけています。最終的な方向は、図面ではなくBIMデータそのものを審査することです。そのため、並行して整備が進んでいるのが属性情報の標準化と確認申請用CDE(共通データ環境)です。
- 標準属性項目リスト Ver2.0(2026年3月) — 共通・意匠・構造・設備に分けて整備
- 確認申請用CDE仕様書 — 申請・審査のデータをやり取りする共通環境
- 構造パラメータの受け渡し標準(JSCA) — 日本建築構造技術者協会が別途整備中
標準属性項目リストに構造編が別冊として存在することは、とりわけ重要です。いますぐ構造データが審査の対象になるわけではありませんが、どの項目をどの名称で持たせるかが、すでに文書として定まりつつあるということだからです。
4支援制度
建築BIMは義務ではない分、補助金によって誘導する構造になっています。2023〜2024年度の「建築BIM加速化事業」は、2025年度から「建築GX・DX推進事業」に再編されて続いています。ソフトウェアの導入、講習、モデル事業などが支援の対象に含まれます。
5構造・配筋にとって何を意味するか
ここからは弊社の見方です。事実関係とは分けてお読みください。
現在のBIM図面審査の中心は建築確認に必要な図面であり、鉄筋の配筋詳細が審査の対象になっているわけではありません。この点を誇張して「配筋もまもなく審査される」と述べるのは正確ではありません。
ただし方向は明確です。「図面が正本」から「データが正本」へと移りつつあり、その過程で属性情報の標準化は構造を含めて進んでいます。データが正本になった瞬間に問われるのは、モデルがあるかどうかではなく、そのモデルの値が正しいかどうかです。
鉄筋は、その検証が最も難しい領域です。継手・定着・かぶりは基準の解釈が分かれ、接合部は図面だけでは干渉の有無を判定しにくい。制度がデータを求め始めたとき、備えがあるかどうかは、それ以前にデータを積み上げてきたかどうかで分かれます。
制度はまだ配筋を問うていません。しかし、問われ始めてから備えるのでは間に合いません。
出典
- 建築BIM推進会議 — BIM図面審査の開始およびガイドライン国土交通省
- 建築確認におけるBIM図面審査ガイドライン(初版)国土交通省
- 建築BIMの将来像と工程表(増補版)国土交通省
- 建築GX・DX推進事業国土交通省
- BIM/CIMポータルサイト(土木)国土技術政策総合研究所
本記事は公表資料をもとに整理したものであり、法令の解釈や助言ではありません。制度は随時変わりますので、実際の適用にあたっては原文および所管機関の最新の公表内容をご確認ください。
